残次品~放逐星空
(ざんじひん~ほうちくせいくう)

人類の未来はどこへ向かうのか?<その3>

" 彩虹ウイルスは、現代人類史上最も衝撃的な疫病であり、『人類の知恵』の産物だ ”
陸信が第八星系を奪還する前、連盟は第八星系を偵察するために部隊を派遣した。それに対して凱菜親王は非武装の民間人を乗せた自動操縦の機甲を先鋒としてきた。泣きじゃくる民間人にミサイルなど発射できない連盟軍は、機甲の精神網を奪取し、捕らえることにした・・・が、それは様々な致死性ウイルスを体内に打ち込まれた『人間生物爆弾』の一団だった。
林静恒「彩虹ウイルスは凱菜親王の研究所から来たものだ。」
彩虹ウイルスは人工的に合成されたもので、小型人工知能が埋め込まれ、病原性が高く、殺菌は極めて困難だ。、第八星系で大規模発生後、散発的な症例が連盟にも流入し、6年後首都星で彩虹ウイルスの特効薬とワクチンが開発された。
陸信が第八星系に抗体を持ち込み、それが第八星系のこの不条理な大惨事から救った。
イタチ「俺は彩虹ウイルスの時代を生きてきた。半分以上の人々は、ウイルスではなく人間同士の内紛で死んだんだ。ウイルスは、敵か味方かを分ける二分法だったんだ。」
林静恒「凱菜親王の本来の意図は、疫病ウイルスの開発などではなかったはずだ。俺の知る限り、彩虹ウイルスは人体に悪意を持って損傷を与えるだけでなく、一部の細胞を未分化な幹細胞へと変性させる可能性がある。」
陸必行「人体は非常に複雑だ。無作為に改造すれば甚大な苦痛をもたらすだけでなく、後々想像を絶する様々な問題を引き起こすだろう。鋼鉄を別のものに変化させる唯一の方法は、溶かして作り直すことだ。彩虹ウイルスは鋼鉄を溶かす炉なんだ。」
陸必行「彩虹ウイルスは第八星系で3億6000万人を殺したけど、僕は救われた。だから僕はこの場所に恩義を感じているんだ。」

臭大姐「人体移植技術なんてこの時代、たいしたことないだろ?連盟がそれをやらないのは倫理的な問題や違法性などからだ。科学技術は急速に進歩しているが、結局その進歩の方向を決めるのは『金』だろ?」
臭大姐「女媧計画は成功した。だが後に漏洩し、女媧計画を遂行した者たちは皆殺しにされ、成功した実験サンプルも消された。」
林静恒「女媧計画はいつ行われていたんだ?」
臭大姐「確か・・・28年くらい前だったはずだ」
林静恒「陸必行の脳内の保護装置は一体何を守っているんだ?なぜ彼の脳内の遺伝子は体と一致しないんだ?『女媧計画』と関係があるのか?」
独眼鷹「陸信に恩義を感じているなら、良心が残っているなら・・・もうこの件については聞かないでくれ。おまえには関係ないことだ」
トゥラン「反烏托邦協会の暗号化ファイルによると、彩虹ウイルスが細胞を変性させる能力を持っていることに気づいた反烏托邦協会が、人類進化の鍵となる可能性があると考え、より完璧な進化を遂げた人類を育成しようとした。これが『女媧計画』の創設につながったようです。」
ワン・アレン「反烏托邦協会の内部記録によると、彼らはかつて第八星系で『女媧計画』を復活させたことがあるそうです」
第八星系で彩虹ウイルスを開発していた者たちは、かつて異形ペットの繁殖を隠れ蓑にしていた。その最大の市場は、今もなお連盟内の星系にある・・・したがって女媧計画のスポンサーは連盟外よりも連盟内である可能性が高い。
陸必行「(女媧計画は、チップを安全に埋め込める人材を育成するために設計された可能性がある。重要な情報を失った反烏托邦協会と自由軍団は、別々の道を歩むことになったのか・・・。)」
"人類はあらゆる驚異的な技術を用いて自然を略奪し、進化における自然淘汰の過程を逃れてきた。それは確かに傲慢だ。だが、人類が進化の過程を人工的に再開させようとする我々の試みもまた、傲慢ではないだろうか?”

"「生命と自然のために。」"
反烏托邦協会の主な目的は、テクノロジーの諸刃の剣について考え、人々に自然への回帰を促し、テクノロジーに命を奪われないようにすることだ。
しかし星歴に入ると、組織は反テクノロジーの過激派に占拠され始め、正式に『カルト組織』に認定された。
自由軍団と関わりのあった最も冷酷なテロ組織となり、その血塗られた遺産は数え切れないほどだった。
凱菜星の王子アレス・フォンは域外へと逃亡した後、反烏托邦協会に加入した。
彼は逃亡中に彩虹ウイルスに感染したと伝えられている。域外では十分な医療を受けられず、全身に壊死が広がったが、反烏托邦協会は人工臓器の使用と製造は自然への冒涜にあたる重大な犯罪であるとし、アレス・フォンには合金製品しか提供しなかったのだ。その結果、彼は奇怪な容姿と三重の障害を負うこととなった。
反烏托邦協会では、信仰が全てを導く。各武装部隊には反烏托邦協会の『預言者』が配置され、星際海賊たちが近代兵器に耽溺し、反テクノロジーという偉大な使命を忘れないよう、日々の監視と洗脳にあたる。
しかし、現代のテクノロジーを災厄、人工知能を精神の違法薬物とみなしながら、人類の解放を追求するためには自らがこれらの『毒』にに感染することは厭わない。
原生林のツリーハウスで眠ることを提唱しながら、戦争ではビッグデータ分析に頼り、客観的かつ科学的に行動する。
林静恒「奴ら特有の奇襲攻撃だ」
相手のワープ先を事前に予測し、妨害してワープルートを変更する、ワープジャミング技術は反烏托邦協会の得意技の一つである。
ホープ「確かに『反烏托邦協会』の名の下に一部の狂人が勢力を増し、常軌を逸した行為を繰り返しています。私たちの本来の教えはそうではありませんでした。私たちはただ、未来の人類のために道を見出したいだけなのです。ですが、連盟やエデンは狂っていないと言えるのでしょうか?連盟には自由も平等もありません。これは人類の自己欺瞞です!」
陸必行「歴史という長い流れの中では、あらゆる角度から異なる景色が見えます。この短い人生で、死ぬまでに結論を出すことは出来ないと思う。人は時と共に様々変化していく中、たとえ間違っていたとしても、いつでも修正してやり直すことができます。
でも信仰は違うんだ。」

陸必行「僕は殺された母さんのお腹から取り出されたらしいよ。母さんは死んでもなお、お腹をぎゅっと抱きしめて守ろうとしていたんだって。」
陸夫人は『湛盧』と共に小型星艦で第八星系まで逃亡したが、追ってきた連盟軍のミサイルにより亡くなった。独眼鷹は陸夫人から子どもを取り出したが、子どもの体はひどく損傷しており、残ったのは脳だけだった。
林静恒は長年、陸必行は元気で気楽な人間だと思っていた。
林静恒「(15年間の治療で、おそらく数え切れないほどの失敗、調整、崩壊を経験しただろう。)」
幼い陸必行にとって、人生は過酷なものだった。『身体に障害を持ちながらも、精神的に強靭』であることを期待するのは無理があり、病気は予想をはるかに超える形で人格に影響を与える。彼は連盟の八つの星系を焼き尽くしたいという野望まで暗示していた。
地下室で生態ポッドの中の人間の顔と蛇の体を持つ異形ペットを見た陸必行は悟った。
陸必行「僕がみんなと違うのも無理はない。どうやらここには僕と同じ仲間がいるようだ・・・」
林静恒「(子どもが衝動的に銃を持ち上げ、人間の頭と蛇の体を持つ少女を射殺した・・・彼は誰を殺そうとしていたのだろうか?)」
感情を深刻に捉えすぎないこと、そして努力に費やした時間を深刻に捉えすぎないこと。これは、陸必行が若い頃の絶え間ない苦労から培われた二つのスキルだった。
感情は主観的でコントロール可能なものなのだ。
林静恒「すべてにおいて完璧な解決策を見つけようとするのではなく、選択の仕方を教えるべきだ。」
独眼鷹「あの連盟軍の上将はこの基地を海賊の囮にするつもりだ。」
林静恒と独眼鷹は二人ともその「ルール」を暗黙のうちに理解していて、基地の人々の名前や経歴を知ろうとはしなかった。
しかし陸必行は基地の人々とどちらの側につくべきか迷い、板挟みになっていた。
彼は林の計画を邪魔しないように、そして状況全体と具体的な事柄のバランスを取るのが最善だと考えていた。
林静恒「争いを避けるな。いつも場当たり的に事を運ぼうとする癖は改めるべきだ。」
陸必行「僕は世間知らずな上に、とても臆病なんだ。いつも争いや衝突を避けて、何も問題がないかのように振る舞っていた・・・。自分でもその点は自覚しているし、今後は改善していくつもりだけど、そう簡単には変われないかもしれない。」
トゥランの訓練における体罰は、個人の尊厳をひどく傷つけるほどにまで及んだ。陸必行には耐えられなかったが、それが効果的であることは認めざるを得なかった。時に、理想や信念だけでは厳しい訓練に耐えられなくても、怒りと憎しみなら耐えられるものなのだ。
陸必行「ここは物置じゃない・・・・これは僕の心だ。」
陸必行「父は去り、君も去り、僕は一人ぼっちでこの砂漠に残され、どうしたらいいのか分からなかった。」
どれだけ理性がヒステリックになっても、彼らのことを考えることはできないし、恋しく思うこともできない。やるべきことは山ほどあった。
陸必行の耳は、聞きたくない言葉を自動的に遮断し、一度も立ち止まらず、歩き出した。そして多くの敵に遭遇した。彼にとって最大の敵は彼自身だった。彼は綱渡り師のように日々バランスを取りながら、爆発したり、沈んだり、沸騰したり、果ては死に至らしめたりしないように必死に戦い続けていた。
陸必行は感情を隠すような人間ではなかった。誰にでも喜びや悲しみがあり、人に見せられないものなど何もないと感じていた。しかし、一夜にして彼は極めて狡猾になり、すべてを心の奥底に隠してしまうようになった。
『希望』という言葉はあまりにも深く傷ついた。
エドワード「第八星系をどうするつもりだ?どんな未来なんだ?」
陸必行「偽りのユートピアから脱却し、新たな探究の時代を切り開きたい。これは、僕が星海学院を設立した当初の意図でもありました。」
エドワード「あなたは自分自身に何をしたんだ?」
陸必行「僕が死んだら、僕の義務はここで終わりだ。でも僕が生きている限り、二度と他者に虐げられるような状況に陥ることはありません。」
エドワード「よく聞け。矛盾していると思わないか?その考えで新時代を切り開こうとしているのか?・・・将来私がいなくなって君が間違った道を歩んだとしても、誰も君を止めることはできないだろう。」
陸必行は疑問に思っていた。なぜ林静恒は、あんなに冷淡で傲慢で頑固な男なのに、長年口うるささに付きまとわれながらも、湛盧の『自己防衛機能』の無効化を考えなかったのか?湛盧は彼の命を守るために、他者と共謀して主君を裏切ったことさえあったというのに。ようやく、陸必行は悟った。そして無効化していた湛盧の自己防衛機能を回復させた。
陸必行「第八星系をどこへ連れて行けばいい?」
第八星系とは一体何だろうか?
陸必行「ハーデン博士、僕はずっと逃げ出したいと思っていました。昔は平和主義者を演じるのが好きでした。意思決定権を他人に委ね、提案するだけで皆を幸せにできると想像していました。誰かを傷つけるような決断はしたくなかった。いつも善良な人間でありたかった・・・後になって気づいたのですが、これは人道的な精神ではなく、ただ圧力をかわすためのものでした。」
陸必行「なぜ僕を産んだの?なぜ僕を飼ったの?なぜ僕を育てたの?父さん、人生は苦しいよ・・・」
独眼鷹「必行!聞いてくれ!少しだけ・・・2時間だけ待ってくれ!!」
死んだ蛇は微笑み、遠い航路にいる父はスクリーンの向こうで、威厳なく泣きながら必死に懇願していた。彼の赤く染まった目を見て、陸必行は一日中地下室で彼を待ち続けた。
独眼鷹「そうさ、お前は普通じゃない。超人だからね。お前がこの世に生まれたのは、皆を救うためだ。何度も生まれ変わり、そして・・・50歳くらいでスーパーヒーローになるんだ!」
独眼鷹「俺は偉大な英雄陸必行の第一信徒だぞ!」
陸必行は彼のあらゆる下手な嘘に付き合って、生きるために精一杯頑張ろうと決めたのだった。