アニメ魔道祖師
<完結編第八話~第九話>
用語・補足説明
アニメ『魔道祖師』のエピソードごとに
【魔道祖師】
完結編<第八話>天が定めし者
魏無羨は四日間寝込んでいた。あれだけの傷が癒えるなど、姑蘇藍氏の高級丹薬がなくては無理だっただろう。
魏無羨「赤鋒尊の遺体は?」
藍曦臣「兄上の遺体は、各世家もその目で確認し、今は懐桑が保管している。」
魏無羨「金光瑤は・・?」
藍忘儀「天衣無縫(てんいむほう)(わざとらしさがなく、自然)だった」
藍曦臣「忘儀・・彼を信じるのか?」
藍忘儀「はい。」
藍曦臣「お前は何をもって一人の人間が信用に値するかを判断できるんだ?」
【乱魄抄(らんはくしょう)】
東瀛(とうえい)(日本)の秘曲集。邪曲集。
この本の中の曲を演奏する時に霊力を込めれば、人に害を及ぼす。霊力の高い者が演奏したなら七音以内で人の命を奪うことも可能だろう。金光瑤の霊力はそう高くないし、あからさまに命を取ることはまずしないだろう。殺傷力の高い邪曲は選ばず、弱い毒を習慣的に服用させるように長期間曲を弾き続けることで、聶明玦の発作を促すことは可能だろう。
金光瑤が弾いていた清心玄曲(せいしんげんきょく)『洗華(せんか)』の旋律にはこの邪曲が組み込まれていた。
魏無羨「金光瑤は一度目を通したものは忘れない能力がある。頁を破って持ち去ったのはあとあと彼の所業が明らかになった時に照らし合わせる証拠を隠滅するためだろう。
清心玄曲と邪曲、真逆の効果を持つ曲を混ぜ合わせて一つの曲を作ったのだろう。赤鋒尊はこの道には精通していないから、判別など出来なかったはず。」
【藍曦臣と静室へ向かう魏無羨】
藍曦臣「父は若い頃夜狩の帰りに母と出会い、一目惚れしたらしい。けれどその女性は父を好いてはくれず・・しかも父の恩師を殺してしまった。」
藍曦臣「父は当然ひどく苦しんだが、結局こっそりその女性を連れ帰り、一族の反対を顧みず夫婦の契りを交わした。しかも一族に、『彼女は一生涯の妻であり、断罪しようとする者がいるなら私が相手になる』とまで言ったんだ。」
藍曦臣「父は母を閉じ込め、また別の建物に自分も閉じ込めた。名目上は閉関と言うものの、その実は自省(じせい)(自ら反省すること)のためだ。」
藍曦臣「君はそれが正しいことだったと思うか?」
藍曦臣「では、どうしたら良かったと思う?」
藍曦臣「忘儀は、子供の頃からかなり執念深いところがある。若き日に君と出会ってその善良さを信じ、何が起きようと、世が君を非難し罵(ののし)っても、君の味方でいようとした。」
【藍氏の抹額の意味】
抹額には『自らを律する』という意味を持つ。姑蘇藍氏の開祖藍安の言葉で、『天が定めし者、つまり心から愛する人の前でだけは、何も律する必要はない。それゆえ抹額はとても私的で、取り扱いに慎重を期すべき大切なもの。自分と天が定めし者以外誰も触れたり外してはならない』とされている。
魏無羨「(岐山温氏開催の弓比べで・・あの場にいた藍家の人々は皆どんな目で彼を見ていたか・・そんな重すぎる意味を持つ抹額を、公衆の面前で悪ガキに取られても、その場で相手を射殺さなかったなんて!藍湛はあの頃から恐ろしいくらい修練を積んでたんだな・・さすが含光君!!)」
魏無羨「(俺は謝るべきなのか?・・だけどもしこいつが恨めしいやら恥ずかしいやらで怒って俺をここから追い出したらどうする?いや、ここのところふざけてもちっとも怒ったりしなかったし、修練を積んだんだろう。いっそこのまま知らないふりしておけば、またわざと引っ張れる。もしこいつが本当に怒りだしたら、知らなかったと無実を訴えればいいんだ・・)」
【招かれざる客】
藍忘儀の持っている通行玉令(ぎょくれい)は、部外者が雲深不知処の結界に侵入すれば異常を知らせてくれる。おそらくこの数日の間に雲深不知処の結界の制約を書き換えたか、あるいは金光瑤の玉令の権限を撤回したのだ。
金光瑤「私が雲深不知処で含光君と夷陵老祖の捜索をしないことで、多くの世家から異議を唱える声が高まっています。門を一時辰(2時間)ほど開けていただけましたら、金氏の者だけ入れて上手く収めますから。」
彼はどうやら夷陵老祖の居場所を捜索することには関心がないようで、いささか奇妙さを覚える。
藍曦臣「もし本当に彼に異心あれば、私も容赦しない。」
『真相を知りたくば、直ちに郯城(たんじょう)へ』
また、屍の群れが乱葬崗を目指しているという。
完結編<第九話>捧ぐ丹心
<乱葬崗 伏魔洞>
魏無羨の人生には、二度の極めて苦しく耐え難い歳月があった。それはいずれもこの場所で過ごしていた時のことだ。だから本当は、二度とここを訪れるつもりなどなかった。そして、温寧にとってはなおさら、この乱葬崗は永遠に忘れられない場所なのだ。
温情之墓・・魏無羨が温寧と温情二人の墓を立てたものだった。
【捕らわれていた若い公子や門弟たちを助ける】
魏無羨「それで相手は何人いるんだ?」
藍景儀「いっぱいいます!全員黒い霧で顔を覆ってるから人相は見えなくて、私たちを縛ってここに連れてくるとそのまま放置し、自滅するのを待ってるみたいです。それとここの外には彷屍がいっぱいうろついています!」
皆を連れて外に出ると、温寧が撥(は)ね飛ばされてくる。しかし彼は一切反撃の意志を示さなかった。
金凌「叔父上!」
藍啓仁「忘儀」
藍忘儀「叔父上」
藍忘儀は藍啓仁のそばへ戻ろうとしない。藍啓仁は否応なく思い知った。彼は失望した表情で首を横に振ると、二度と甥を諫めようとはしなかった。
「斂芳尊まで深手を負った」
魏無羨「大物が二人足りないようだな。このような盛事に斂芳尊と沢蕪君がなぜ来ていないんだ?」
蘇渉「ふん!貴様知ってるくせになぜ聞く?斂芳尊は金鱗台で何者かに暗殺されかけて重症を負った。今はまだ、沢蕪君が治療しているところだ。」
金光瑤が重症を負ったと聞いて、魏無羨は聶明玦に不意打ちをかけるため、わざと自殺を図って見せた時の彼の堂々たる姿を思い出し、「ぷっ」と吹き出した。
伏魔洞の前に集まった仙師たちは、皆正義のために成し遂げてやるという熱意に溢れていた。彼らがやっていることは偉大なる義のための行為だという事を、欠片も疑ってはいない。名声を語り継がれ、万人からの称賛に値する、『正義』による『邪悪』の討伐なのだと。
彼らの姿に、乱葬崗討伐のあの日が重なる。
しかし魏無羨の隣には、一切ためらいもなく、恐れて退く意思などまるでないといった表情で立っている藍忘儀がいる。
今はもう、一人ではない。
【霊力が消えた】
突然この場にいる者の九割もの人々の剣芒(けんぼう)が消える。江澄の紫電も指輪に戻った。
霊力がなくなると呪符までもが効かなくなり、琴と笛で奏でた曲もただの音となり、魔を退ける効力を失った。藍忘儀の琴の破障音もいくら優れているとはいえ、たった一人の力に過ぎない。魏無羨も呪符を飛ばすが、あっという間に形勢が一変する。
剣芒・・仙剣から放たれる光で、霊力を表している。霊力が強ければより強力な攻撃となる。
「この蘇宗主と門弟は破障音の一部分を変えていたというわけだ」
聶懐桑「世の中にはただ聞くだけで人の霊力を奪うような怪しい曲があるんですか!?」
魏無羨「むしろ、なんでないと思うんだ?琴の音が魔を退けられるなら、どうして邪を招くことができない?人を殺す秘曲まであるんだ、人から一時的に霊力を奪うことくらい不可能じゃないだろう?」
魏無羨「蘇宗主、禁書室にはお前の主(あるじ)が出入り出来れば十分だろう?楽譜を改ざんする方法も、おおかたそいつがお前に教えたんだろうな」
雲深不知処を自由に出入りできるほど地位が高く、強い権力を持つ者で、蘇渉の主。
―――言うまでもなく斂芳尊しかいない。
魏無羨「ここに金鱗台の芳菲殿にある密室で見つけた『乱魄抄』から破り取られた楽譜がある。この中にお前らが奏でた旋律があるかどうか、藍先生に見てもらえば真相は明らかになるだろう」
その紙を受け取った藍啓仁は眉をひそめる。
蘇渉「藍先生、罠です!」
蘇渉は手を伸ばして紙を奪おうとする。
その時避塵が彼を襲う。蘇渉の剣も竿から出て防御する。
――騙された!
その剣は剣芒を放ち、明らかに霊力に満ちていた。
魏無羨が藍啓仁に渡した紙は、金鱗台で見つけた『乱魄抄』の欠けたページなどではなく、金光瑤が奏でた怪しい旋律を藍忘儀が手書きで写したものだった。(アニメでは白紙のようです。)
秣陵蘇氏の門弟たちは、呆然としていた。蘇渉は彼らに例の旋律が間違ったものだということも、自分と同じように霊力を失わずに済む方法があることも教えていなかったらしい。それはつまり、計画の中では彼ら門弟も他家の者と同じく全員死ぬはずだったということだ。
【陣が破られ、屍の大群が押し寄せる】
蘇渉に陣を破られ、描き直そうと試みるが、既に元の呪印は破壊されてしまい、描き足したところで元には戻らない。
膨大な数の凶屍がなだれ込んでくる。
ほとんどの者が霊力を失っている。
陰虎符に操られている屍は魏無羨には操れない。
陰虎符に操られている屍に剣や通常の術は効かない。
【覚悟の召陰旗】
魏無羨「的があるから、屍たちはお前らには見向きもしない。だから無駄に戦おうとするな。ひたすら外に向かって突き進め」
藍思追「藍先生!含光君と魏先輩は!?」
藍啓仁「かくあれかし(そうするべきだ)」