アニメ魔道祖師
用語・補足説明
【魔道祖師】
完結編<第八話>天が定めし者
魏無羨は四日間寝込んでいた。あれだけの傷が癒えるなど、姑蘇藍氏の高級丹薬がなくては無理だっただろう。
魏無羨「赤鋒尊の遺体は?」
藍曦臣「兄上の遺体は、各世家もその目で確認し、今は懐桑が保管している。」
魏無羨「金光瑤は・・?」
藍忘機「天衣無縫(てんいむほう)(わざとらしさがなく、自然)だった」
金光瑤が遺体を損なって証拠隠滅を図ることができない状況だと確認できれば十分だ。
藍曦臣「忘機・・彼(魏無羨)を信じるのか?」
藍忘機「はい。」
藍曦臣「お前は何をもって一人の人間が信用に値するかを判断できるんだ?
兄上の首を彼(金光瑤)が持っているかどうか、私もお前も自らの目で確認はしていない。ただ私たち自身が、別の誰かに対する信頼を頼りに相手の言い分を信じているだけだ。」
藍曦臣「魏の若君、心配は無用だ。事の真相が明らかになるまで、私はどちらか一方に偏って信じたりはしないし、君たちの居場所も誰にも教えたりしない。」
【乱魄抄(らんはくしょう)】
東瀛(とうえい)(日本)の秘曲集。邪曲集。
この本の中の曲を演奏する時に霊力を込めれば、人に害を及ぼす。霊力の高い者が演奏したなら七音以内で人の命を奪うことも可能だろう。金光瑤の霊力はそう高くないし、あからさまに命を取ることはまずしないだろう。殺傷力の高い邪曲は選ばず、弱い毒を習慣的に服用させるように長期間曲を弾き続けることで、聶明玦の発作を促すことは可能だと思われる。
金光瑤が弾いていた清心玄曲(せいしんげんきょく)『洗華(せんか)』の旋律にはこの邪曲が組み込まれていた。
魏無羨「金光瑤は一度目を通したものは忘れない能力がある。頁を破って持ち去ったのは、あとあと彼の所業が明らかになった時に照らし合わせる証拠を隠滅するためだろう。」
魏無羨「清心玄曲と邪曲、真逆の効果を持つ曲を混ぜ合わせて一つの曲を作ったのだろう。赤鋒尊はこの道には精通していないから、判別など出来なかったはず。」
藍曦臣「禁書室について、私は彼に教えたことなどない」
魏無羨「藍宗主、金光瑤は射日の征戦の際に岐山温氏の不夜天城に間者として潜り込んでいましたよね。奴は温若寒の隠し部屋まで見つけて潜入し、全ての情報を暗記して金鱗台に流していたほど優秀でした。彼にとって藍家の禁書室はいとも容易い場所だったことでしょう」
「魏の若君、君にわかるかな」
藍曦臣「君も知っているように、私の父は閉関し、世間のことには関心がなく、そのため姑蘇藍氏は長年にわたってほぼ叔父一人がまとめてきた。父が閉関していたのは、母が原因だ。」
閉関・・他人との交流を断ち、修練を行う事。
姑蘇藍氏宗主青蘅君も一時は広く名を轟かせた名師だった。順風満帆だったはずの成人する歳に、なぜか突然勇退して妻を娶った。しかも二度と世間とは関わらないと公言したため、閉関とはいえ隠退したも同然だった。
藍曦臣「父は若い頃夜狩の帰りに母と出会い、一目惚れしたらしい。けれどその女性は父を好いてはくれず・・しかも父の恩師を殺してしまった。父は当然ひどく苦しんだが、結局こっそりその女性を連れ帰り、一族の反対を顧みず夫婦の契りを交わした。しかも一族に、『彼女は一生涯の妻であり、断罪しようとする者がいるなら私が相手になる』とまで言ったんだ。」
藍曦臣「父は母を閉じ込め、また別の建物に自分も閉じ込めた。名目上は閉関と言うものの、その実は自省(じせい)(自ら反省すること)のためだ。」
「忘機は昔から執着心が強い」
藍曦臣「幼かった忘機は、叔父が『逝く』と言った意味が理解できず、誰がどう慰めても、叔父がどれだけ叱責しても、毎月ここに来て扉を開けてくれる人を待っていた。そして母はもう戻らない、誰も扉を開けてくれる人はいないのだとわかるようになっても、ここに来ることをやめなかった。忘機は子どもの頃からかなり執念深いところがある。」
【藍氏の抹額の意味】
抹額には『自らを律する』という意味を持つ。姑蘇藍氏の開祖藍安の言葉で、『天が定めし者、つまり心から愛する人の前でだけは、何も律する必要はない。それゆえ抹額はとても私的で、取り扱いに慎重を期すべき大切なもの。自分と天が定めし者以外誰も触れたり外してはならない』とされている。
魏無羨「(岐山温氏開催の弓比べで・・あの場にいた藍家の人々は皆どんな目で彼を見ていたか・・そんな重すぎる意味を持つ抹額を、公衆の面前で悪ガキに取られても、その場で相手を射殺さなかったなんて!藍湛はあの頃から恐ろしいくらい修練を積んでたんだな・・さすが含光君!!)」
「(俺は謝るべきなのか?)」
魏無羨「(・・だけどもしこいつが恨めしいやら恥ずかしいやらで怒って俺をここから追い出したらどうする?いや、ここのところふざけてもちっとも怒ったりしなかったし、修練を積んだんだろう。いっそこのまま知らないふりしておけば、またわざと引っ張れる。もしこいつが本当に怒りだしたら、知らなかったと無実を訴えればいいんだ・・)」
【招かれざる客】
藍忘機の持っている通行玉令(ぎょくれい)は、部外者が雲深不知処の結界に侵入すれば異常を知らせてくれる。おそらくこの数日の間に雲深不知処の結界の制約を書き換えたか、あるいは金光瑤の玉令の権限を撤回したのだ。
金光瑤「私が雲深不知処で含光君と夷陵老祖の捜索をしないことで、多くの世家から異議を唱える声が高まっています。門を一時辰(2時間)ほど開けていただけましたら、金氏の者だけ入れて上手く収めますから。」
彼はどうやら夷陵老祖の居場所を捜索することには関心がないようで、いささか奇妙さを覚える。
藍曦臣「もし本当に彼に異心あれば、私も容赦しない。」

『真相を知りたくば、直ちに郯城(たんじょう)へ』
また、屍の群れが乱葬崗を目指しているという。