アニメ魔道祖師
用語・補足説明

【魔道祖師】
完結編<第三話>はかなき夢

【共情(きょうじょう)】
怨霊を直接体に招き入れ、術者の体を媒介にその魂魄と記憶に侵入する。一番手っ取り早く有効な手段であり、誰でも出来るが、どんな方法より危険でもある。ひとたび怨霊が術者に逆らい反撃されたら、最低でも奪舎は免れない。
共情者が霊の感情に入り込みすぎて自力では抜け出せなくなる可能性があるため、儀式には監督者が必要であり、清心の鈴の音を合図とした(共情者の慣れ親しんだ音が望ましい)。
共情してみると、阿箐の両目の白さはおそらく生まれつきだが、実際には普通に見えていることがわかった。阿箐は天涯孤独だったため、暁星塵は阿箐がついてくることを黙認したようだった。
そして重症を負って倒れていた薛洋を見つけ、使われていない義荘に運ぶ。
時系列的に、仙督の座についた金光瑤の「始末」から首の皮一枚というところで逃げ出してきたところだろう。薛洋を殺し損ねた金光瑤は、まさか逃げられたとは言えず、あるいは生き延びられはしないだろうと確信し、始末したと公言したに違いない。
暁星塵は運悪く自分をここまで追い込んだ敵を助けてしまったのだ。この時の薛洋は喉までやられていたらしく、声が掠れていたため、薛洋の正体に気付けなかった。薛洋は暁星塵を騙して、自分の傷を治させることにしたようだ。
暁星塵は旅をしながら夜狩をしていたが、薛洋のため、しばらく義城に滞在することにした。屋根の補修をしようとすると、薛洋も手伝う。薛洋は口達者で冗談が上手く、話しも面白かったので、二人は楽しそうに談笑していた。
薛洋は怪我がほぼ治りかけていたものの、二人のもとを離れようとせず、依然三人の暮らしを続けている。声もわざと違う声色を装っている。一体何を企んでいるのかはわからなかった。
夜狩へ薛洋がついていく。機転が利く阿箐は薛洋が善意でついていくはずがないと考えてあとを追う。
霜華剣は屍気を察して目の見えない暁星塵を導く。

暁星塵の霜華剣の光が一筋横切ると、その刃は生きている村人の心臓を貫いた。しかし阿箐が死体を調べると顔中に死斑が現れていたため、彷屍であったのだとほっとする。
確かに一見屍のように見えるが、屍毒にあたったせいだ。おまけに舌を切られていたため、声を出すことが出来なかった。舌を切られた村人たちは、彷屍のようなおかしな叫び声しか上げることができない。暁星塵も自分が斬ったのは彷屍だと疑いもしなかっただろう。
二年後、阿箐は町中で宋子琛に出会う。阿箐が彼を義荘の近くまで連れて行くと、宋子琛は薛洋の姿を見て全身を震わせる。阿箐に「道長には何も言わないでくれ」そう言い残し、買い出しに出た薛洋を追った。
薛洋「宋道長、俺があんたの大事な白雪観を皆殺しにしたのは、たしかにあいつのせいなんだから、あいつに八つ当たりするのも理解できる。だけどな、それこそがまさに俺の思うつぼってやつだよ」
薛洋「『二度と会うこともない』とか言ったのは誰だよ。今更なんの用があって探しに来た?」
彼の一言一句が宋子琛の急所を突く。
薛洋は自らの手で精製した屍毒の粉を宋子琛にかけ、降災で彼の舌を切落した。
【再会が死別の時】
降災(こうさい)・・薛洋の剣。血と殺戮をもたらす、不吉な剣。
払雪(ふっせつ)・・ 宋子琛の剣
薛洋「暁星塵道長、俺が最後まで話さなかったあの物語、勝手に話させてもらうぞ。最後まで話して、それでもまだ俺が悪いと思うなら勝手にしろ」
薛洋「俺が常萍の父親とのわずかな諍い(いさかい)のためになぜ一族を皆殺しにしたのかって?だったらなんで奴が子供だった俺を弄(もてあそ)んで虐(しいた)げた理由は聞かないんだ!?今の俺は、あの日の常慈安が生み出したんだ!櫟陽常氏が滅びたのは自業自得なんだよ!!」
薛洋「世の中を救うだって?笑わせるなよ。誰が正義で誰が悪か、情けと恨みのどちらが大きいかなんて、他人に判断できるわけがないだろ?」
薛洋「お前は自分自身すら救えやしねぇ!お前は何一つ成し得ず、完全に大負けしたんだ。皆お前のせいで犠牲になった、それは自業自得だよな。全部自分で招いたことなんだから!」

目を失った暁星塵は涙も失い、代わりに血を流し続けた。
魏無羨は暁星塵の姿に自分自身を重ね合わせていた。
一敗地(いっぱいち)にまみれ、何一つ成し得ず、人々に後ろ指をさされ罵倒されてもすべて取り返しがつかず、ただ大声で泣き喚くことしかできなかった自分自身を!
――清心の鈴の音
魏無羨「阿箐、お疲れさま」
阿箐はこの数年間、たった一人で怪しい霧が立ちこめるこの義城の中を薛洋から隠れ回り、薛洋の邪魔をして、町に入ってくる人々を脅かしては町の外まで導いてきた。彼女のその行動にはどれほどの勇気と執念が必要だったろうか。
【点睛召将術(てんせいしょうしょうじゅつ)】

魏無羨「明眸(めいぼう)は恥じらい閉じて、赤い唇は笑みにほころぶ。善悪問わず、点睛の招きに応えよ」
鬼道は過ちだとわかっているのに、なぜたくさんの人たちが修行したがるのか、なぜ夷陵老祖を真似する人があとを絶たないのか。少年たちは理解に苦しんだが、その業(わざ)を目の当たりにして、確かに人を魅了する計り知れない何かがあることを知った。
そんな中で金凌の表情だけがひどく強張っていた。
「先輩、あなたと含光君はよく似ています。」
魏無羨「似てる?俺たちのどこがだ?」
魏無羨は面食らった。自分たちは天と地ほどの差もある二人なのに、と。
阿箐は迷霧の中で影のように薛洋の背後に張りつき、「カツカツ」と竹竿を打っては薛洋の居場所をさらし、藍忘機を攻撃すべき方向へ導いている。
魏無羨は宋子琛から釘を引き抜く。
魏無羨「わざわざ俺に暁星塵の魂魄の修復を頼んだのはなんのためだ?生きる意欲を失った者は救えない!」
魏無羨は薛洋を怒らせて気を散らせ、怒鳴らせて声を出させようとする。
魏無羨「なんで常萍を殺した?お前みたいな奴が皆殺しにするのに何年もかけるなんてありえないだろう?自分の復讐のためなら、どうして降災ではなくわざわざ霜華を使った?なんで常萍の両目をくり抜いて、暁星塵と同じようにしたんだ?
一体誰のための復讐なんだ?おまえ自身が一番よくわかっているはずだ!」

斬り落とされた薛洋の片腕からは、一粒の小さな飴が転がり落ちる。その飴は黒ずんでいた。
伝送符(でんそうふ)・・一瞬にして人を千里も離れた場所まで移動させることが出来るが、同時に大量の霊力を消耗し、使用後は回復にかなりの時間を要するため、未熟な者には使えない。大変便利な代物ではあるが、実際に使う者はほとんどいない。
出血量を見る限り彼の死は確実であり、刺客の目的は薛洋が持っているであろう陰虎符だろう。噂では薛洋が「始末」されたあと、陰虎符も消えて行方知れずとなっている。義城に集まった大勢の屍は、どう考えても屍毒の粉や釘だけで操るには限界がある。薛洋が持っていた可能性は大だ。

『遺体は荼毘(だび)に付す(火葬する)。霊体は供養する。』
粉々に砕けてしまった暁星塵の魂は元の体に戻ることはないだろう。だから遺体は火葬した方がいい。体が消えれば残るのは純粋な魂魄だけ。穏やかに静養すれば、またこの世に戻れる日がくるかもしれない。
宋子琛『霜華を背負い、世を渡る。星塵とともに、魔を除き、邪を払う。』
宋子琛『彼が目覚めたら伝える。すまなかった、君に非はないと。』
それは生前に伝えられなかった言葉だった。
