アニメ烈火澆愁 (れっかぎょうしゅう)
用語・補足説明
注)日本語翻訳版小説は出ていないため、中国語版の独自翻訳による独自解釈となり、著者様の意に沿ったものではない可能性があります。あくまで参考としてご覧ください。
【烈火澆愁】
<第7話> 桃 源 郷(とうげんきょう)
桃源郷・・・世俗を離れた別世界。素晴らしい場所。ユートピア。
桃花郷の思い出がゆっくりと動き始めた。盛霊淵と宣璣はそれに巻き込まれ、時間とともに動かざるを得なくなった。
人類の王子は、まだ傷が癒えていなかった。盛霊淵はまだ10歳だったが、それまで終わりのない恐怖の中逃げ続けていたため、子供らしい純真さをすっかり失っていた。
幼い阿洛津は盛霊淵に対して好奇心旺盛で一緒に遊びたかったが、族長の一人息子として甘やかされて育ち、子供の頃から注目の的であったので「プライドを捨てて積極的に友達を作ろう」という発想はなかった。この人間の王子も光栄であるはずだと彼は思っていた。
盛霊淵が彼を無視すればするほど、阿洛津は怒り、自分の存在を誇示したかった。
宣璣「彼らも『霊淵』て?」
昔の人は名前の意味を最も重視していたそうだが、『霊淵』という二つの文字は『深淵』という意味を持ち、縁起が悪い。特に陛下はそのような特別な時代のお生まれなのだから。
宣璣「(そんな名前をつけた奴、一体どんな悪意を持っていたのだろう?)」
宣璣「俺たちは今、閉じ込められているのか?」
宣璣は人皇の記憶の中で血なまぐさい光景を見るのだろうと思っていたが、ただ少年の後を延々と追いかけ、些細な日常の出来事で堂々巡りをするとは予想していなかった。盛霊淵もまた弱く、自己欺瞞的であるのだろうか?ある記憶に囚われているのだろうか?
盛霊淵「これらのことは随分昔のことで、今のところは思い出せない。だから 何か知りたいことがあれば、直接私に問え。質問に基づいて思い出し、この些末(さばつ)(些事(さじ))(取るに足らない)から出られるか試そう。」
この状況下で問題を議論し、自分の弱点を露呈させて瞬きもせずに見ているこの神秘的な陛下は、もはや人間とは思えなかった。宣璣の質問に、盛霊淵は偉大な自制心で精神を調整し、この素朴で温かい思い出を捨て去ったことは明らかだった。
盛霊淵「聖人(大聖)の驚魂(きょうこん)を盗んで私の枕に隠した」
『驚魂』は、人々の心にある最も恐ろしいものを呼び起こす。恐怖や戦慄はすべて偽りであり、一度見破れば消え去る。 元々は聖人が自身の修行のために用いていた術だ。しかし当時、族長と聖人は幼い盛霊淵が怖がることを恐れて慎重に接していたため、族長は激怒し、公衆の面前で阿洛津を殴りつけた。
彼は泣きながら、山の麓に部族が設置していた結界を突破し、兀族の保護区域を後にした。
妖族「兀族どもの縄張りに入れなくて困ってたんだ」
兀族は平和的で攻撃的ではないが、彼らの呪文は神秘的で予測不可能だった。人族は彼らを恐れ、妖族もまた彼らに威圧されていたので、盛霊淵が兀族の中にいることを知りながら、入り込むことができず途方に暮れていた。
妖族は人間を食べた。捕らえられていた少女の足は骨だけになっていたが、彼女は妖術で生かされていた。生きたまま食べられた少女は気が狂い、その光景を目撃していた阿洛津も気が狂いそうになった。
盛霊淵の短剣には魔を鎮める呪文がかけられていた。
少女の命を繋げていた妖術は短剣によって切断され、彼女はようやくこの世の地獄から解放されたのだった。
盛霊淵「いつの日かきっと、全ての亡者の目を閉じて、行き場のない全ての亡骸を手厚く葬る」
この一言が阿洛津の人生を台無しにした、と盛霊淵は感じていた。
宣璣「陛下、失礼だが、あなたのこの記憶は真実なのか?」
宣璣「『妖族』という概念がどのようなものかは分からないが、逃亡中に護衛十二人が命を落としたと言ってたから、相当な力を持っているんだろ?この子供たちが呪文つきの短刀一本使っただけで逃げおおせたとしたら、少し無理があるように思うんだが。」
宣璣「・・ただ疑問に思っただけだ。もしかしたら、あの妖族たちはその日、お腹の調子が悪かったのかもしれないし、兀族の呪文か何かにアレルギー反応を起こしただけかもしれない」
盛霊淵は思った。「(この小妖は、大丈夫だ。情熱的すぎる者は決して成長せず、阿洛津のような結末を迎えることになる。)」
盛霊淵「阿洛津は兀族の掟を破って東州を離れた」
絶望した人々は、予言の主人公がまだ10代前半の子供であったにもかかわらず、漠然とした欠陥のある予言にすべての希望を託していた。そして人類が形勢を逆転できる唯一のチャンスは、可能な限りの援助を獲得することであり、その中で兀族は極めて重要であった。強力であることはもちろんだが、兀族が発明した呪文は特殊な小道具になっているため、人間でも武器として使用することができた。
しかし兀族には決して東州を離れないという掟があった。穏やかで争いごとには無関心であり、平帝が提示した高い地位や高額の給与も彼らには響かなかった。
6年後人族は行方不明だった盛霊淵を朝廷に連れ戻すため、兀族の元へ人々を派遣した。阿洛津を中心とする兀族の若い世代は、もはや先祖たちのように平和に満足することはできない。彼らは活力に満ち、世界に名を残したいと熱望していた。阿洛津は父である族長と激しく喧嘩し、天下を平定(へいてい)(敵を撃って統一)するという夢を追い求めて、若者たちとためらうことなく出発した。
盛霊淵は東州を去った後、正式に王位を継承した。
阿洛津が族長の地位を継いだのは14、15歳だった。
宣璣「結局仲間割れをしたのは・・奴の執念が深すぎたから?」
兀族が人族陣営に加わると、他の部族たちもチャンスを逃すまいと次々と人族に加わった。
絶望的な状況下で困っている者同士が結束しても、強大になれば当然、なんらかにより亀裂が生じてくる。これは自然の法則だ。たとえ兄弟とは言え、皇帝の前で遠慮なく話せばそれは反逆罪となる。皇帝の尊厳は傷つけられるわけにはいかない。さもなければ、彼は何百もの部族を率いることは出来ない。
人間は、不満を言い合ったり、仲間内で争ったりするという独特の才能を持っている。
阿洛津はいかなる不正や損失も許さない、気性の荒い人物だった。弱さを他人に見られたくなかったため、常に面目を保とうとしていた。その結果、時と共に彼は少し陰気で風変わりな性格になり、彼と付き合うことがだんだん難しくなっていった。
盛霊淵は幼い頃からすべて一人で乗り越えなければならなかったため、タフであることに慣れていた。したがって、彼は自分のわがままな偏見が反発を招くことになるとは思っていなかった。気付いたときには、すでに遅すぎた。
宣璣「妖族は部族ではない。妖王に従って戦う意志を持つ者もいれば、最初から反対する者、また妖族に全く受け入れられない半妖もいる。結局、多くの妖族や半妖は人族側につくことになる。こうした支援こそが人族の望みだったが、阿洛津は我慢できなかったんだろう?」
盛霊淵「庇護(ひご)した半血半妖に地位を与えるため、『清平司』を設立した。それを知った阿洛津は激怒し、私を困らせるため、前線での任務を放棄して民を率いて東州へ撤退した。
宣璣「あいつは?」
盛霊淵は突然両こめかみを強く押さえて苦しみだした。宣璣は本能的に彼を支えて、驚いた。この体は温かく、人間の体と同じだった。彼の指は冷や汗で覆われ、震えていた。
宣璣は伝承を思い出した。武帝は若い頃は才能に恵まれていたが、晩年は性格が急に変わって多くの残虐な行為を犯したと。これは正常とは言えず、病気であった可能性が非常に高い。睡眠障害、持続的な耳鳴り、いつでも起こりうる片頭痛など、神経性障害の症状ではないかと推測した。
盛霊淵「前線から撤退した兀族は、戦場にあった魔法陣を破壊した。妖族はこの隙をついて猛烈な反撃を開始し、住民を虐殺。二つの都市と数十の村が妖族の手に落ちた。」
宣璣「なぜまだ最前線近くに住民がいたんだ?なぜ避難しなかったんだ?」
盛霊淵「戦争は長く続いた、安心して住める場所なんてどこにあると?当時兀族が呪術でその地域を守っていた。多くの住民たちが彼らに従い、兀族の村が形成され、共存し、とても平和だった。人々は兀族のために、食べ物や新鮮な果物を積み上げた」
しかし、兀族の若き族長は彼らを見捨てた。
宣璣「だから阿洛津は宗廟に隠れたのか」
兀族は人類が最も危機に瀕していた時、自らの呪術を人族に差し出した。それが彼らの義務だと感じていたからだった。
盛霊淵「私が助けに来るのを待っている。」
これまで阿洛津が誰かと衝突するたびに、盛霊淵は事態を収拾するために全力を尽くしたからだ。彼はそれを当然のことと考えるようになっていた。
霊淵が来れば、彼と対立する人類は撤退するだろう。霊淵は祭壇の上の神のような存在で、全能である。そして月明かりの中、彼を導く兄弟でもある・・・。