残次品~放逐星空
(ざんじひん~ほうちくせいくう)
用語・補足説明

<エピソード16> あの日のように
陸必行「北塔号の通信ポートか・・・残骸を探して」
陸必行の視界に壊滅的な墓場が広がった。
防御も回避もできない『空間浮遊物』は、死の砂漠に放置され滅びる運命にある。たとえ命があったとしても、恐怖の中で運命を待つしかない。まるで生き埋めにされたかのように。

陸必行は『墓地』の残骸を分析した。集められた情報は、原因と結果の大まかな概要をまとめるのに十分だった。
しかしこの時ばかりは、林静恒の気持ちや状況を詳しく考える勇気はなかった。
林静恒は感情を一切表に出さず、沈黙し、抑制し、激怒した時にのみほんのわずかに感情を露わにする。一人で補給所を出て、道中で危険を察知した彼は、黙って自らその責任を負い、凶悪な海賊団に単身で立ち向かい、彼らを死の砂漠へと導いた。想像するだけで胸が張り裂けそうだった。

カワセミ「(人間としての尊厳があります)」
源異人「お前を献上した奴がこれぞ『女媧(じょか)計画』の最高傑作だと言っていた」
源異人「お前は『女媧計画』作品唯一の生き残りだと紹介された。だから私はずっとお前を大切に思い、自由に歩き回ることさえ許したほどだ。」
女媧・・・中国古代神話の女神で、人類の創造主とも言われる。人首蛇身。

湛盧「本物とは性能が違います」
湛盧が慌てて変身した脱出ポッドは本物ではないため、衝撃吸収機能とバランス調整機能を備えていなかった。飛び出した瞬間、林静恒は意識を失った。
陸必行が機甲の加速を限界まで押し上げると、防御システムが耳元で悲鳴を上げた。小さな石でさえ機甲のシールドを容易く貫通し、彼も機甲もろとも消滅してしまうような自殺的な加速で、陸必行は脱出ポッドを追いかけて救助ネットで絡め取った。
脱出ポッドが崩れ落ちると、湛盧は挨拶する間もなく電力を使い果たし、ロボットアームへと姿を変えた。
林静恒「操縦する 精神網を渡せ」
林静恒は機甲の精神網から陸必行の精神状態が不安定で、精神リンク率が揺いでいるのを感じ取っていた。
陸必行「断る。できるなら奪えよ」
陸必行「精神網から強制的に切断されると、深刻なダメージを受けると聞いた。僕はまだ試してないけど、本当なの?上将、僕に教訓を与えてくれる?」
陸必行「役立たずだと?だから1人で解決を?」
陸必行「君は信用できない、役に立たない無能な負け犬どものためになぜ自分の命を危険にさらしたのか、考えたことはある?」

陸必行「林、凱菜親王が白鷺星を爆撃したって知ってからずっと、君のことが心配だった。補給所で待つなんてことはできなかった。粒子流が通り過ぎるとすぐに、君を探しに出てたんだ。ワープ地点近くで何百体もの機甲の残骸と死体を見た。あの時の僕の気持ち、分かる?」
彼の突然の真剣さに林静恒は驚き、陸必行の腕を締め上げていた手は無意識のうちに緩んだ。
陸必行「僕は人生でこれほどの悪夢を経験したことがない。君は、自分を心配している人たちに苦しみを与えているとは思わないの?」
林静恒は昏睡状態の間、次々と現れる幻覚と混乱した夢の中で少年時代に戻っていた。
陸信「子供は好きかい?」
林静恒「いいえ」
陸信「心配するな。たとえ子供ができたとしても、父さんはおまえを一番に愛してるぞ。」
陸信「静恒。烏蘭学院に入学したんだから、自分の進む道は分かっているだろう?静妹は管理委員会だ。お前たちは互いの弱みとなり、利用されることになるだろう・・・大人になれば分かる。」
陸信「将来、俺たちは皆、お前より先に死ぬんだ。その時お前には身寄りがなく、静妹も遠い。だからせめて親戚がいればと思うんだ。その子は君と一緒に成長し、君のことをよく理解し、俺たちがいなくなった後も君を守ってくれるだろう。」
林静恒「・・・死なないよ」
彼は陸信のシャツの端をそっと掴んだ。
陸信「みんな死ぬんだ」

~放逐星空
陸必行「林、君の人生で大切なものってある?全力で守りたいものは?何があっても必ず戻りたい場所、会いたい人、残りの人生を過ごしたいと思う惑星とか場所はある?・・・そんなのはないんだ。林、君はただ連盟の上将であり、その義務を果たすだけなんだ。死んだら死んだで構わなくて、養父の残した小さな期待なんて背負いたくない。そうだろう?」
林静恒「・・・どこへ行っても、どれだけ長く離れても――必ずそこへ戻る。」