残次品~放逐星空
(ざんじひん~ほうちくせいくう)

人類の未来はどこへ向かうのか?<その5>

“ チップを販売していた海賊どもは『自由軍団』と名乗っていた。 ”
自由軍団は、チップを埋め込んで人間兵器を育成する計画を連盟内外で展開している。これは反烏托邦協会の女媧計画と類似している。
湛盧「自由軍団の最終目標は自動化ではなく、人間と機械の両方の利点を兼ね備えた進化した人間の創造です。ですが、彼らはまだその目標を達成していません。」
林静恒「だから反烏托邦協会の女媧計画を狙っているのか」
トゥラン「光栄団も反烏托邦協会も、潤沢な資金と万全の準備、そして長期的な計画が伺えます。彼らの重量機甲はかつての連盟軍のものとほぼ同等です。しかし・・・自由軍団は例外です」
自由軍団はチップ実験の際に、第八星系の小規模カルト集団『毒巣』とさえ協力していた。彼らのやっていることは悪質だったが、派遣労働者並みの低質さで、本格的なテロ組織には見えなかった。
トゥラン「チップが連盟で大流行すれば、想像を絶する利益をもたらすでしょう。しかし計画立案者が海賊と手を組めば、自分たちの利益を海賊どもに譲り渡すようなもの。いわゆる『自由軍団』は、この人物が育てた治外法権の暴漢集団であり、指示に従っているに過ぎないのでしょう」
自由軍団は当初、どこからともなく入手した粗悪な機甲で、他の二大海賊組織と比べると寄せ集めのような存在だったが、遭遇するたびに装備は急速に発展していた。戦争が始まってまだ1年余り。この麻薬王が核爆発のように富を蓄積したということは、一体どれだけのチップが連盟内で蔓延したということなのだろうか。

" チップの究極の目的は、自由主義という両刃の剣を封じることです。これはより良く、より寛容な社会へと繋がり、技術の進歩は倍増するでしょう。 ”
エデン崩壊後、人々は不安と鬱に悩まされていた。精神安定剤は需要と供給のバランスがとれず、連盟中央委員会によって規制された。エデンを失った彼らは、まるで生命力を失った植物のようで、家族ぐるみの集団自殺も頻発していた。
埋め込み型バイオチップ、人々はこれを『アヘン』と呼んだ。
『アヘン』の説明には『エデンの喪失によって引き起こされた人体の不調を緩和し、体質を強化する』とあった。人々は気分が良くなるだけでなく、一夜にして『超人的な能力』を与えられ、まるでエデンの簡易版のようだという事に気づいた。その結果、『アヘン』は連盟内で一夜にして流行したが、中毒性があることから連盟は使用を中止し、法律で明確に禁止薬物に指定した。
林静妹「合法的な精神安定剤が全く手に入らないって知ってた?だから皆闇市に手を出すようになったのよ。" 噂によると “、闇市の中には『エデンの半分』を作れる場所もあるらしいの。あの小さなチップさえあればね。今、皆が知恵を絞って、どうやって手に入れようかと模索しているわ。」
陸必行「自由軍団のチップ『アヘン』は、連盟管理委員会と密接に結びついていたホワイトタワーのチップの模造品だ。自由軍団と反烏托邦協会がホワイトタワーのチップを探していることは明らかだし、何らかの理由でチップを作り出す技術が失われたのかもしれない。」
チップを埋め込まれた人々は、日常のコミュニケーションはごく普通で、性格もそれぞれ異なり、中には高い専門性を持ち、知識豊富でユーモアのある者もいる・・・しかしまるで働き者の蟻のようで、論理と人間の本性に反していた。まるで脳のプログラムを書き換えられたかのようだ。
陸必行「誰もが規則に従い、義務を果たし、昇進の道筋も決まっているからだ。誰も混乱することもなく、皆幸せだ。チップによる階層的な抑圧によって、彼らは心から従い、抑圧されていると感じることも、抵抗する必要性も感じないんだ・・・」
チップマン「私は偉大なる師に従い、輝かしい未来を探求する、人類進化の先駆者となることを選択しました。チップで人々の行動を制御することで、法律を知りながら破る者、従うふりをして密かに反抗する者、そして腐敗した法執行官はもういなくなるでしょう。」
第二理工大学校長「私たちは異なるイデオロギーによって絶えず衝突し、消耗し、やがて憎しみが生まれ、世界は混乱と崩壊に陥るです。これが私たちの生来の欠陥であり、より高度な文明の実現を阻む障害なのです。
・・・しかし私が言いたいのは、異なる意見や価値観を持つことは全く普通のことであり、悪いことではないということです!」
一度作られたものは、決して消えることはない。薬物乱用は歴史を通じて続いている。チップ帝国が崩壊したとしても、エデンのようなバイオチップ中毒は消えないだろう。この新タイプの薬物は社会の悩みの種となるのだろう。

“ エデンの世界。こんな趣のない世界は、私がこの手で終わらせる ”
林静妹「階級が明確で効率の高い社会こそが理想郷なのです。自由宣言を弄ぶような真似はさせない」
陸必行「林さん(静妹)の考えは必ずしも非現実的なものとは言えません。もし世界が彼女の思い描いた通りになれば、少なくともエデンの過ちを繰り返すことはないでしょう。」
陸信「静恒、烏蘭学院に入学したんだから、自分の進む道は分かっているだろう?静妹は管理委員会で、お前たちは互いの弱みとなり、利用されることになる。大人になればわかる。これも彼女を守るためだ。」
陸信「非常に複雑な状況下では、誰を愛し、誰を憎んでいるのかを他人に悟らせることはできないんだ。ウルフが静妹のために抗わなかったのは、お前たち二人のことを思っていなかったからではない。解るか?」
少女は家と残された唯一の家族から引き離され、管理委員会に引き取られた。以来、喜びも悲しみも、心身さえもコントロールできなくなり、命を蝕む憎しみに囚われ続けた。
ウルフやハーデン博士が管理委員会から連れ出してくれることを願ったが、叶わなかった。若くして亡くなった母が自分を愛してくれているのではないかと思っていたが、実際はそうではなかったことも理解した。
林静恒「ゴードン家の人間と結婚なんて、連盟管理委員会と結婚するに等しい。よく考えてみろ。もし嫌なら、そう言ってもいいんだ。」
林静妹「私が志願したのよ、兄さん。管理委員会と結婚して何が悪いの?」
林静恒「俺と管理委員会はいずれ決裂し、俺たちは敵同士になる運命だ。彼女が俺と距離を置いてくれた方が、どちらにとっても都合が良い。俺と管理委員会のどちらかが最後に笑っても、彼女はそれなりに幸せな人生を送ることができるだろう。」
林静妹「本来なら二人で分かち合う運命だったのに、私はあなたに見捨てられたのです。静恒、双子なのに、なぜ?でも、時には感謝もしているのです。まるでもう一人の私のように思えるから。自由に生きるあなたの姿を見て、私も同じ幸せを見つけたような気がするから。」
ハーデン「君は怖いんだ。静恒が目を覚ますのが怖い。彼と向き合うのも、自分自身と向き合うのも怖い。ただ・・・誰であれすべてをコントロールすることはできないんだ。静妹、まだわからないのか?」
林静妹「静恒、小さい頃は、ずっとここにいてほしいと願った。10代の頃は、迎えに来てほしいと願った。大人になったら・・・行かないでほしいと願った。」
林静妹「もう遅すぎます。弱さは罪です。泣きながら助けを待つ者は皆、死に値するのです。だからあなたの知っている少女は死んでしまったのです。」
林静妹は林静恒が生涯守りたかった少女だった。
林静妹「あなたたち双子なの?とても仲がいいのね。」
ポワソンは彼女がそう言った時の、まるで少女のようなうらやましそうな目を今でも覚えている。
『紺碧之海』の花言葉は ” 二度と帰ることのできない故郷 ”